当院院長・近江源次郎が株式会社医学書院刊「今日の眼疾患治療指針」の「屈折・調節異常」の項目を執筆しておりますので、その内容を転載しお届けいたします。

 今回の掲載内容は「調節障害」についてです。「今日の眼疾患治療指針」への当院院長の執筆は「屈折・調節異常」の項目内「遠視・近視・乱視・調節障害・不等像視」で、各項目別に今後順次Webサイト上で掲載をしていく予定です。

以下、株式会社医学書院刊「今日の眼疾患治療指針」より(2007年10月15日第2版第1刷発行)

 

【概念】
 健常者の加齢変化による老視(presbyopia)と病的異常とに区分できる。老視とは加齢変化による調節力が減退し、近方視が困難になった状態である。
 病的異常には調節衰弱(ill-sustained accommodation)、調節不全(accommodation insufficiency)、調節遅鈍(accommodation intertia)、調節麻痺(paralysis of accommodation)、調節緊張(tonic accommodation)、調節けいれん(spasm of accommodation)などがある。

1.調節衰弱
 近点測定を反復すると、近点後退現象のみられるもの 。

2.調節不全
 発症が急ではなく、調整力が年齢相当の調節力よりも弱いもの。

3.調節遅鈍
 遠点から近点への調節時間の延長するもの。

4.調節麻痺
 近見障害が急性発症し、近点が異常に遠隔しているもので、調節が残存する調節不全麻痺(paresis of accommodation)と、まったく調節が残存しない調節麻痺(paralysis of accommodation)に区分される。感染、薬物、外傷などのほか、中枢神経、動眼神経、毛様体筋の障害を原因とする。

5.調節緊張
 2つの別のclinical entityに使われ、1つは一般的に現在使われている調節緊張(tonic accommodation)で、生理的トーヌス(調節筋の生理的緊張を保つ必要最小限の緊張)と異常トーヌス(生理的緊張範囲を超えた異常な緊張状態で、これが偽近視を発生させる)からなる。もう1つは調節緊張症ともいわれ、調節緊張時間と調節弛緩時間の一方または両方が延長するものである。麻疹、糖尿病、アルコール中毒などでみられる。

6.調節けいれん
 調節過多の状態をいい、その原因により機能的と器質的とに二分される。 1.機能的調節けいれんは調節筋の過労による症状で、固視意思を持ったときに調節筋の緊張亢進が認められるもの、2.器質的調節けいれんは副交感神経刺激状態で発症し、非合目的の不随意性の調節筋収縮をいう。



  問診、視力検査(遠方,近方)、屈折検査、調節検査(近点計、アコモドポリレコーダ、赤外線オプトメータによる準静的特性検査など)が必要である。
 また病的異常の病態把握には、近見反応の3要素である調節・瞳孔・輻湊の同時測定が役立つことが多い 。



 老視の治療法はなく、対症的に減退した調節力を眼鏡またはコンタクトレンズで補うことになるが、通常眼鏡が用いられる。近用眼鏡は屈折異常矯正分のレンズと老視による調節力の減退分の近用付加レンズを加えたものとなる。近用作業距離の違いにより必要とする近用付加レンズ度は異なる。
 病的異常に対しては、原因の解明除去が第一であり、原因疾患(全身病や眼疾患)への治療や環境の改善が大切となる。対症療法としては、近用(作業)眼鏡やビタミンB製剤内服などを用いる 。


ホームへ