当院院長・近江源次郎が「Eye Surgery バトルロイヤル2 網膜硝子体、斜視編」(発行:株式会社メジカルビュー社 2006年9月10日初版)の「斜視手術」に執筆しておりますので、その内容を転載しお届けいたします。
  「Eye Surgery バトルロイヤル」では、専門領域別に5、6名のSurgeon(外科医、Doctor)が質問に対して持論を披瀝する形式で構成されていますが、Web掲載に関しましては、当院院長の記載内容のみ掲載の許諾を得ており、他の方の記載部分は掲載できませんのでご了承願います。
 尚、本企画( Eye Surgery バトルロイヤル)は、6年前から眼紀(日本眼科紀要)で掲載が開始されたもので、すでに過去のものとなった手技や禁忌ではなくなったシチュエーションも含まれておりますが、基本的に雑誌掲載時の文章はそのまま掲載しています。雑誌掲載時から変更が生じた手技や方法等は青文字で掲載していますのでご了承願います。
 第3回目の掲載内容は「手術」についてです。「Eye Surgery バトルロイヤル2 網膜硝子体、斜視編」への当院院長の記載項目は「麻酔法、縫合糸・縫合法、手術、定量法、手術時期、今後の展望」で、各項目別に今後順次Web上で掲載をしていく予定です。

 これまで私がトレーニングを受けた施設で、低倍率の双眼ルーペを使用して斜視手術を施行していたこともあり、従来は、初回手術では顕微鏡を使用せず、再手術症例でのみ顕微鏡を使用していた。顕微鏡を使用しない場合は、目的筋に対して最もアプローチしやすい場所から手術操作が可能なことが利点と考える。しかし最近になり、対物レンズの焦点距離が200mmの顕微鏡(ツァイスOPMI VISU200)を使用できるようになったこともあり、斜筋手術を含むすべての眼科手術で顕微鏡を使用するようになった。斜視手術での顕微鏡の使用に際して、内眼手術時と同じ同軸照明で、光量は白内障手術時の約半分で、また通常、総合倍率は最小倍率である3.9〜6倍前後までで使用している。ただ、強膜通糸時には拡大して行っている。焦点距離が200mmあると、一般の斜視手術器具による干渉をまったく気にせず手術が可能である。顕微鏡使用の最大の利点は調整力が衰えた術者にも、拡大率を任意に大きくすることやフォーカシングにより常に明るい鮮明な像が得られることで、強膜穿孔や筋紛失などの術中合併症を回避することができること、およびビデオ録画ができることがあげられる。

 特に何も用いていない。光毒性(羞明を含む)については内眼手術と違い、手術開始後すぐに眼球を転回させる(局所麻酔ではしてもらう)ので、角膜保護を特に必要としない。しかし止血のための交感神経刺激薬点眼の影響で散瞳を生じている場合などでは、顕微鏡に内蔵されているエクリプスフィルターを使用したり、斜照明にする場合がある。またcontrol sutureの牽引に際しては、角膜上皮障害を生じさせないように細心の注意が必要である。他の内眼手術と同様に角結膜が乾燥しないよう人工房水(または生理食塩水)を間欠的に助手にかけてもらうことも必要である。

 

 将来的に緑内障手術をはじめとする斜視以外の手術も受けられる可能性や、術後の整容を考え、なるべく結膜およびTenon膜への侵襲が少なくなるような結膜切開法を選択するように心掛けている。一般に年齢が高くなるにしたがって、結膜の弾性およびTenon嚢組織が少なくなるので、幼小児に比べ高齢者では、結膜を引っ張ることで簡単に裂けてしまうため、あらかじめより大きな結膜切開が必要となる。また、できるだけ結膜切開創が上眼瞼または下眼瞼で隠れるように配慮している。具体的には、乳幼児の内直筋後転術では、角膜輪部から約8mmの鼻下部球結膜に対して円蓋部結膜小切開(cul-de-sac incision, 約5mm)を行い、ほぼそれに直交する内直筋下縁に沿ってTenon嚢切開を行うことで強膜を露出する。なるべくTenon嚢を結膜にくっつけるように筋の露出を行う。またそのほかの高齢者以外の水平筋手術に対しては、直筋上縁(やや上方)に平行に、輪部から円蓋部まで(内直筋は半月ひだまで)放射状に結膜切開を行い、より直筋上縁に近く同様にTenon嚢切開を行うことで強膜を露出している。また結膜弾性の少ない高齢者では、さらに付着部(若干角膜側)で輪部に平行な結膜切開を追加することでL字切開にする。いずれもなるべくTenon嚢を結膜側にくっつけるように筋の露出を行っている。上斜筋および垂直筋に対しては、上直筋又は下直筋の付着部より若干角膜側で付着部に対して平行に経結膜切開(8〜10mm)およびTenon嚢切開を行っている。下斜筋の手術では、4-0シルク糸で付着部付近に下直筋と外直筋へ牽引糸をおき、眼球を内上方へ牽引しているが、ちょうど下直筋と外直筋間に生じる皺にそって経結膜切開(約10mm)およびTenon嚢切開を行っている。

 

 結膜およびTenon嚢切開、さらに縫合糸の切除を含むほとんどすべてにスプリングハンドル式剪刀曲(イナミS-511C)を用いている。

 

 局所麻酔による外来斜視手術の場合は、片眼(手術眼)への眼帯は術翌朝の外来受診時まではしていただいている。その後一切、眼帯や穴あきカッペはしていない。
 全身麻酔による斜視手術の場合は、片眼手術、両眼手術を問わず、術当日、全身麻酔が完全に覚醒した時点で眼帯を中止し、所持眼鏡がある場合はそのその眼鏡を清潔にした状態で装用していただき、就眠時に両眼への清潔穴あきカッペへ変更している。術翌日よりは、眼帯や穴あきカッペは一切せず、覚醒時に所持眼鏡を装用していただいている。また所持眼鏡がない場合は、術当日、全身麻酔が完全に覚醒した時点で眼帯を中止しクリアグラスへ変更する。術翌日からは眼帯や穴あきカッペは一切しない。


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