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当院院長・近江源次郎が「Eye Surgery バトルロイヤル2 網膜硝子体、斜視編」(発行:株式会社メジカルビュー社 2006年9月10日初版)の「斜視手術」に執筆しておりますので、その内容を転載しお届けいたします。
「Eye Surgery バトルロイヤル」では、専門領域別に5、6名のSurgeon(外科医、Doctor)が質問に対して持論を披瀝する形式で構成されていますが、Web掲載に関しましては、当院院長の記載内容のみ掲載の許諾を得ており、他の方の記載部分は掲載できませんのでご了承願います。
尚、本企画( Eye Surgery バトルロイヤル)は、6年前から眼紀(日本眼科紀要)で掲載が開始されたもので、すでに過去のものとなった手技や禁忌ではなくなったシチュエーションも含まれておりますが、基本的に雑誌掲載時の文章はそのまま掲載しています。雑誌掲載時から変更が生じた手技や方法等は青文字で掲載していますのでご了承願います。
今回の掲載内容は「麻酔法」についてです。「Eye Surgery バトルロイヤル2 網膜硝子体、斜視編」への当院院長の記載項目は「麻酔法・縫合糸、縫合法・手術・定量法・手術時期・今後の展望」で、各項目別に今後順次Web上で掲載をしていく予定です。


全身麻酔では手術前日入院で、翌日退院の計3日間の入院で斜視手術を行っている。麻酔医より硫酸アトロピンなどの前投薬をしていただく以外は、眼科からは前投薬を行っていない。また、局所麻酔での斜視手術は原則として外来手術で行っているので、前投薬はまったく行っていない。
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眼科的には全身麻酔、局所麻酔ともに前投薬は行っていない。全身麻酔斜視手術については、4年以上前までは、手術前日入院、翌日退院の計3日間の入院で行っていたが、最近(4年前より)は全身麻酔手術もほぼすべて日帰り手術で行っている。麻酔科的には3日間入院のときは、麻酔医の指示で硫酸アトロピンなどの前投薬を行っていたが、日帰り全身麻酔手術となってから、前投薬は行っていない。

●全身麻酔
1.挿管下での全身麻酔
従来より用いられている麻酔医による麻酔管理という一般的な挿管下での全身麻酔のことだが、年少児では理由がない限り第一選択にしている。また成人でも精神発達遅延や痴呆があって協力が得られない場合は適当と考える。上斜筋の手術やJensen法などのように痛みが強いことが予想される場合や、複雑な斜視手術で手術時間が長くなる可能性が高い場合なども挿管下での全身麻酔で行っている。
2.プロポフォール静脈麻酔
複雑な斜視で 移動量の予測ができない場合、導入および覚醒の早いプロポフォール麻酔を無挿管下で用いることで、手術操作中は一般的な挿管下での全身麻酔のごとく眠らせ、術中定量の際に速やかに(約2分で)覚醒させることで、術中移動量調整手術が可能であり有用と考えている。ただプロポフォール自体は鎮痛効果を有さないので、フェンタニールなどの鎮痛薬を併用する必要がある。また呼吸抑制や徐脈を引き起こす可能性があるので、麻酔医による管理が必須となる。
●局所麻酔
前記のような、全身麻酔を用いる必要のないすべての斜視手術で局所麻酔を用いている。局所麻酔の利点は、眼科医のみで手術を行える点、麻酔に要する時間が少なくて済む点、全身への影響が少ない点、術前検査が少なく外来手術で行える点、以上の点より費用が安く済む点などがあげられる。一方、欠点としては、症例により術中の除痛効果にばらつきがある点、年小児や成人でも協力が得られない場合には用いられない点などがある。また術者が初心者の場合や、痛みが強く手術時間が長くなることが予測される場合は、局所麻酔より一般的な挿管下での全身麻酔が第一選択となると考える。

私は、術中定量が必要であり、かつ眼筋操作が最低限で済む直筋の後転術単独の場合に限り点眼麻酔を用いている。そのほかの斜視手術における局所麻酔には、すべてTenon嚢下麻酔を用いている。
斜視手術における局所麻酔では、 眼筋を牽引したときの深部痛覚をブロックする必要があるため、内眼手術で有効である視神経周辺より眼内に入る短毛様神経や長毛様神経をブロックするのみでは不十分で、目的とする眼筋群周囲に十分麻酔薬を浸透させる必要があると考える。つまり球後麻酔は斜視手術の局所麻酔としてはきわめて理想的と考えるが、私自身はここ数年まったく斜視手術に用いていない。その理由は、頻度が低いのだが眼球穿孔や視神経損傷という重篤な合併症が生じる可能性があることや、球後麻酔の合併症として頻度が高い球後出血が生じると、多くは手術を中止しなければならなくなるからである。また球後麻酔時の痛みを訴える患者さんも結構多く、肝心な斜視手術時に痛みの閾値が低下していると考えられる症例も存在する。最大の理由としては、合併症がほとんどないTenon嚢下麻酔によって、球後麻酔とほぼ同等の麻酔効果が得られることと考えている。ただ最近、Tenon嚢下麻酔により術中定量が可能との報告を散見するが、私たちが行った検討では、術中定量を施行するための眼球運動を温存するにはTenon嚢下腔への麻酔注入量を極力減らす必要があり、その適応はかなり制限があると考えられた。一般に局所麻酔による手術では、いわゆるvocal
anesthesiaとも称されるが、患者さんの不安を取り除く目的で、術前、術中に患者さんに適宜話しかけ、安心させるとともに患者さんの心理状態を把握することが重要である。患者さんが痛がると痛みの閾値が低下して追加麻酔を行っても効きがたいことが多く、手術を受ける患者さんにとって「痛み」は「恐ろしさ」とかなり近いところにあり、恐怖心が痛みの閾値を下げていると考えられるので、生じると予想される感覚をあらかじめ告げることにより、患者さんは余裕をもってそれを受容できる。局所麻酔下での斜視手術については、特に眼筋の牽引は最小限とし、眼心反射や疼痛が生じないように、できるだけていねいに眼筋を扱う必要があるとともに、vocal
anesthesiaが大切である。最近私は、tenon嚢下麻酔での術中定量をはじめからあきらめ、結膜切開部より深作式ピンポイント麻酔24G針(鈍針)を強膜に沿って眼球後方まで入れ、2%キシロカイン3〜5mL(結膜浮腫があまり生じない程度の最大量)を注入し、目的筋群周囲に十分浸透するまで待つように心掛けている。この方法を用いるようになり、追加麻酔を必要とすることはなくなり、また患者さんが痛がり術者が早く手術を終わらせようとパニックになるということも皆無となった。

全身麻酔での斜視手術も局所麻酔での斜視手術と同様に外来手術で行うことができれば、経済的負担の軽減や時間的制約の削減、また入退院に伴う煩雑さの回避など患者さん側のメリットは特に大きいと考える。しかし、全身麻酔で斜視手術を受けるほとんどの患者さんは幼少児であることもあり、いくら速効性の優れた麻酔薬が使用できるようになったとしても、全身麻酔のリスクは変わらず存在するので、入院手術と同等の、全身管理がすぐ行える体制づくりが必要と考える。
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全身麻酔での斜視手術も局所麻酔での斜視手術と同様に日帰り手術で行うことができれば、経済的負担の軽減や時間的制約の削減ができ、また入院が長引くほど院内感染の機会が増えるというデータもあり、特に患者さん側のメリットは大きいと考える。しかし、全身麻酔で斜視手術を受けるほとんどの患者さんは幼少児であることもあり、いくら速効性の優れた麻酔薬が使用できるようになったとしても、全身麻酔のリスクは変わらず存在するので、入院手術と同等の、全身管理がすぐ行える体制づくりが必要である。全麻斜視手術について私は、勤務医をしていた頃(2002年6月まで)は、手術前日入院・翌日退院の計3日間の入院で行っていた。しかし開業医となった2002年7月からは近所の住友病院で全麻斜視手術をほぼすべて日帰り手術で行っている。日帰りでの全身麻酔斜視手術が可能となった理由としては、1、より短時間作用性の麻酔薬が使えるようになったことと、2、ラリンジアルマスクエアウェー(LMA:larungeal
mask airway)使用があげられる。LMAは器官挿管とほぼ同じような安全性をもって気道確保ができるが、LMAの挿入には筋弛緩薬を要せず、手術後の筋弛緩の残存を気にしなくてもよくなった。
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