
当院院長・近江源次郎が株式会社文光堂発行「眼科検査ガイド」の「調節検査」の「他覚的調節検査」の項目を執筆しておりますので、その内容を転載しお届けいたします。
「調節障害」の検査方法等について記したものです。5月に掲載の「自覚的調節検査」(現在「眼の健康」のページに掲載中)とあわせてご覧いただきますと、より「調節障害」の検査方法についてご理解いただけると思います。
以下、株式会社文光堂発行「眼科検査ガイド」より
(2004年11月3日発行)

調節を他覚的に評価する装置(赤外線オプトメーター)を使用することにより、正確な屈折度の変化(純粋な水晶体屈折度変化)を測定できることで、自覚的検査における調節lagの影響をかなり排除でき、これまで不明瞭であった調節異常の病態をより正確に把握することが可能となった。調節検査には視標を動かしながら検査する方法(動的測定)と、視標を眼前一定の距離に置いて、これを注視させたときの屈折変動を測定する方法(静的測定)の二つがある。この両方の測定に対応できる調節検査機器がアコモドメーターAA-2000(ニデック社製)である。本装置を用いると、静的測定の応用として、雲霧状態での屈折変動や暗視野下での屈折変動(調節安静位)を測定することも可能である。また、視標変化に伴う瞳孔面積の変化を同時に測定することができ、現時点で調節機能に関して最も多くの情報を提供しうる臨床検査機器といえる。

| 検査法 |
: |
調節遠点、調節近点、調節力(幅)、微動調節、調節lag、動的特性、静的特性、準静的特性、調節反応と調節刺激の比率(Ar/As比)。 |
| 検査機器 |
: |
アコモドメーターAA-2000(ニディック社製)。 |

基本構造はBadal光学系による視標提示装置をもつConsweet型赤外線オプトメーターと簡易型電子瞳孔計をパーソナルコンピューターに接続したもので、視標の動きはコンピューターで制御される。また、視標に追随して変化する被検者眼の屈折度の変化は赤外線オプトメーターにより、瞳孔面積の変化は電子瞳孔計により連続的に測定され、データディスクに記憶されるとともに、それぞれ調節波形および瞳孔波形としてモニター上に表示される。

パーソナルコンピューターによりオートレフラクトメーターの内部視標の動きを制御し、赤外線オプトメーターにより測定された眼屈折(測定経線は0°)の変化と瞳孔径がモニター上に表示される。調節反応は大きく静的特性と動的特性に分けられるが、この器械では等速度(LINEAR)制御で内部視標を移動させることにより調節の準静的特性を測定し、ステップ(STEP)制御で内部視標を移動させることにより調節の動的特性の測定を行う。調節の準静的特性とは、調節の静的特性が損なわれない範囲に定屈折で視標を移動させたときに得られる調節の特性である。

| 基準位置 |
:被検者の屈折値を入力 |
| 移動幅 |
:被検者の予想調節幅を入力 |
| 移動速度 |
:鵜飼らに従い0.2D/secが広く用いられている |
| 停止時間 |
:0〜60秒で設定 |
| 刺激回数 |
:1〜50回(STEP制御のみで使用) |

| 調節力 |
:-14.0 D 〜 +19.0 D |
| 測定可能最小瞳孔径 |
:2.9mm |

測定プログラム(AR3-AV6)を起動させ、モニター画面上の指示に従って操作を行う。視標の制御法には等速度とステップがあり、いずれかを選択する。等速度制御測定では視標の基準位置を被検者の180°方向屈折度により2D遠視側に設定し、T1、T3は20〜60秒に、T2は0秒に、移動速度は0.2D/sec、移動幅は6〜12Dに設定する。dark
focus of accommodationを測定するときは、T1+T2+T3任意に設定し、視標移動幅を0Dにし、視標照明灯を消して測定する。ステップ制御測定では、基準位置を被検者の180°方向屈折度よりわずかに近視よりに設定し、移動幅は3〜5D、停止時間は5秒、刺激回数は5〜10回に設定する。測定は自然瞳孔で片眼ずつ行う。
実際の測定
| 1. |
被検者は裸眼で赤外線オプトメーター内蔵の視標を固視する。 |
| 2. |
静的特性とは視標を1点に固定し、その状態での調節反応特性である。実際には、視標をゆっくりと(例えば0.2D/秒)移動させて調節反応を測定する準静的特性により、調節遠点、調節近点、調節の微動が求められる。視標の移動速度は0.2D/秒で近点側に最大まで移動した後、再び遠点側に移動する。モニター画面の波形から遠点、近点、調節刺激・調節反応・調節の微動を求める。 |
| 3. |
動的特性とは、被検眼の屈折値を基準として、例えば停止時間5秒・刺激回数5回、移動幅5Dで刺激視標を瞬間的に移動させたときに得られる調節反応(ステップ応答)を知るものである。 |

本装置は、赤外線オプトメーターを用いて屈折変化を測定するという意味において他覚的であるが、検者の適切な誘導と被検者の協力とがなければ正確な検査はできない。つまり他覚的調節検査といえども、調節反応には被検眼の矯正視力・被検者の努力、注意、集中力、視標を移動させる速度・視標の大きさ、コントラスト、明るさなどが影響する。具体的には検者は測定中に、しっかり視標を見るべきときと、ぼんやりと前方を見るべきときを被検者に指示する必要がある。視標を注視すべきときに、被検者が視標をしっかり見なければ調節麻痺型の波形となる。また、雲霧状態での測定や、dark
focus of accommodationの測定中に、被検者が明視しようと努力すれば調節痙攣型の波形となるので注意を要する。また片眼への調節刺激(内部視標)に対する調節反応を測定しているため、自然視(両眼開放状態)とはかなり環境と違う状態での測定であることを考慮する必要がある。
調節波形(青い線)、瞳孔波形(黄色の線)のパターンから、調節機能が正常範囲内にあるか、調節痙攣型の異常か、調節麻痺型の異常かを判断する。本装置での調節測定はvisual
display terminal(VDT)症候群またはテクノストレス症候群の診断には特に有効であり、これらの疾患では調節痙攣または緊張の波形が得られることが多い。また自覚症状の軽快に伴い、その調節痙攣または緊張の波形の改善を認め、治療効果の評価に役立つ。
また本装置での調節反応は純粋な水晶体屈折度変化を測定しているため、調節幅(他覚的調節幅)は、調節力の加齢変化で示した自覚的調節幅よりも著しく狭く、例えば40歳代ではわずかに1Dほどしかなく、50歳代では0Dとなる。
最近になり、眼調節測定ソフトウェアAA-1(ニデック社製)が追加され、内部視標呈示位置を一定条件に従い移動させ、8ステップでの調節微動高周波成分の出現頻度(high
frequency component:HFC)をカラーコードを用いたグラフ表示することで、短時間でわかりやすく毛様体筋の活動程度評価ができるようになった。今後の臨床応用が期待される。 |