当院院長・近江源次郎が株式会社文光堂発行「眼科検査ガイド」の「調節検査」の「自覚的調節検査」の項目を執筆しておりますので、その内容を転載しお届けいたします。
「調節障害」の検査方法等について記したものです。「他覚的調節検査」についても執筆しておりますので、「他覚的調節検査」については次回(7月)掲載の予定です。

以下、株式会社文光堂発行「眼科検査ガイド」より
(2004年11月3日発行)

 

 調節障害が疑われた場合に調節の近点がどの位置にあるかを知る。接眼部の試験枠にレンズを加入することによって、人工的な近視を作れば、この機械にて遠点も計測できるようになっている。調節力(幅)(表1)の測定は・精密な調節機能を知るうえで欠くことのできないものであり、調節力(幅)を調節遠点から調節近点までのdiopter;Dの変化幅として求める。

[ 表1] 調節幅の年齢別正常値

年齢(歳)

調節幅(D)

近点(cm)

 

年齢(歳)

調節幅(D)

近点(cm)

10

14.0

7.1

50

2.5

40.0

20

10.0

10.0

55

1.5

66.7

30

7.0

14.3

60

1.0

100.0

35

5.5

18.2

65

0.5

200.0

40

4.5

22.2

70

0.25

400.0

45

3.5

28.6

75

0

(内海 隆:眼科検査法ハンドブック第3版,p62,1999)

 調節遠点測定 [ far of accommodation(FPA)] , 調節近点測定 [ near point of accomodation(NPA)]
 検査機器:石原式近点計
 ※石原式近点計:0.6視標を近づけ、ピントがぼけ始めた点が近点、凸レンズの装着により遠点も測定できる。

1. 被検眼の前の試験枠に完全矯正レンズを装着する。
2. 角膜頂点に移動式スケールの0点を合わせる。
本来は遠点とは眼の第1主点からの距離であるので角膜後方(網膜側)1.5mmにスケールの0点を合わせるべきであるが、臨床上は誤差も含めて角膜頂点を0点として問題ない。
3. 視標(通常は0.6の視標)をゆっくり被検眼に近づけ、被検者には明視し続けるように命ずる。
4. ピントがボケ始めた点を答えてもらい、このときの視標の位置をスケールで読み取る。これが調節近点NPAであり(図1-1)、調節近点を a cmとすると100/aが近点の屈折値(単位はdiopter;D)となる。
5. +4.0Dのレンズを近点計のレンズ枠に装着する。すでに完全矯正レンズが入っているときは、その球面レンズにさらに+4.0Dを加えたレンズを装着する。
6. 視標をスケールの約15cmのところにおく。
7. 視標をゆっくりと被検眼から遠ざけ、被検者に明視し続けるように命ずる。ピントがボケ始めた点を答えてもらい、このときの視標の位置をスケールで読み取る。これが調節遠点FPAであり(図1-2)、調節遠点を b cm とすると100/b -4.00が遠点の屈折値(単位はdiopter;D)となる。
8. 調節幅は100/a-100/b+4.00 [D]で求められる。

(図1)


 調節幅の検査では、被検眼の矯正視力、被検者の努力、注意、集中力、視標を移動させる速度、視標の大きさ、コントラスト、明るさなどが影響する。また、ピントがボケ始めた点を正確に答えるのもむずかしい、さらに調節lag(lag of accommodation)として、正確に調節を行っていなくてもピントが合ったようにみえる現象があることも考慮しておかねばならない。この調節lagには、ピンホール効果としての小瞳孔や乱視の存在などが影響しており、自覚的検査での調節幅は、他覚的に求めた真の屈折力の変化としての調節幅よりも大きな値となる。

 遠方と近方に置かれた視標にピンとが合うまでの時間の長さから調節障害を診断する装置である。内蔵された視標はレンズによって光学的に遠方と近方に設置され、電動式に遠方視標と近方視標が交互に点灯するようになっている。視標にピントが合うまでの時間を調節時間として反復測定する。近方視標にピントが合うまでの時間を緊張時間、遠方視標にピントが合うまでの時間を弛緩時間として調節時間の現れ方をいくつかの型に分類し、調節障害の性格を明らかにすることができる。

 調節遠点測定、調節近点測定、調節緊張時間測定、調節弛緩時間測定、調節緊張・弛緩時間反復測定、調節量変化測定法、調節域内区間調節時間測定法。
 検査機器:アコモドポリレコーダーは自覚的な調節機能検査装置であり、調節緊張時間、調節弛緩時間、調節近点および調節遠点を測定するために用いられるが、遠視標が40cm〜∞、近視標が5〜40cmに任意に移動でき両視標をハーフミラーで、同一線上に5秒間隔で交互に露出し、Landolt環の切れ目の方向が明視できた時点で被検者がボタンを押すことにより調節緊張時間、調節弛緩時間を反復して測定できる。ここでのポイントは調節遠点、調節近点の位置を限界点で設定せずに実際に一度決めた距離で5秒以内に焦点が合うかどうかを確かめてから測定することである。測定回数は10〜15回とし最初の数回は練習とし測定回数に含めない方がよい。この測定法を調節緊張・弛緩時間反復測定法と呼び、アコモドポリレコーダーの通常用いられている方法である。これ以外に遠、近視標いずれかを固定し他方を測定ごとに位置を変え調節量を変化させて測定する調節量変化測定法、あるいは調節域内において一定の調節量に対する時間を計測する調節域内区間調節時間測定法があるが、一般的ではない。

1. 被検眼の前の試験枠に乱視の完全矯正レンズを装着する。
2. 遠視標は明視できる限界点に設定する。
3. 近方視標は近点より遠ざけた位置に設定する。
4. 被検者に遠近視標を交互に呈示しながら、被検者が明視できたときにボタンを押すように命ずる。
5. 自動測定にして記録紙に10〜15回の反復測定が記録できれば終了する。
6. 得られた波形を型分類し、調節障害を判定する。

 調節時間は遠視標から近視標を凝視したときに調節により焦点が合うまでの時間を調節緊張時間と呼び、近視標から遠視標を凝視したときに調節を弱めることにより焦点が合うまでの時間を調節弛緩時間と呼ぶ。調節時間の正常値は1.25秒以内とされているがこれは若年者の場合で中高年者の場合は調節力が落ちているために近点と遠点の差がなくむしろ調節時間が短縮している場合もある。これを解決するためには単位調節時間の概念がある。単位調節時間とは被検者が明視できるアコモドポリレコーダー上の調節近点および調節遠点より調節刺激量diopter(1/近点m〜1/遠点m)を求め調節時間を調節刺激量により除することによりdiopterあたりの調節時間を測定し単位調節時間(sec/diopter)とし年齢による差、条件による差を除外することができる。この方法により、条件が異なる場合でも比較検討することが可能となる。単位調節時間による年齢別の単位緊張時間および単位弛緩時間の正常値を表2、3に示す。

[ 表2] 単位緊張時間(緊張時間/調節刺激量 sec/diopter)

正常値

18〜24歳

0.4±0.5

25〜29歳

0.5±0.5

30〜34歳

0.5±0.3

35〜39歳

0.8±0.5

40〜44歳

0.9±0.4

45〜49歳

1.2±0.8

50〜54歳

1.4±1.0


(渥美一成:眼科診療プラクティス18,p113)

[ 表3] 単位弛緩時間(弛緩時間/調節刺激量 sec/diopter)

正常値

18〜24歳

0.3±0.3

25〜29歳

0.4±0.2

30〜34歳

0.5±0.3

35〜39歳

0.7±0.5

40〜44歳

0.8±0.3

45〜49歳

1.0±0.7

50〜54歳

1.2±1.0


(渥美一成:眼科診療プラクティス18,p113)

 本装置における検査法には、調節時間、単位調節時間、調節速度などの定量的な方法と反復測定によるアコモドグラム(パターン分類)の定性的な手法があるが、本装置が自覚的検査法であるという特徴からもアコモドグラムの活用が望まれる。
 アコモドグラムパターンには緊張時間、弛緩時間別々に判定する方法と、同時に判定する方法の2通りある。ここでは後者のアコモドグラムパターンを示すと以下の0型〜9型の10パターンに分類できる。
1)0型(正常型)
緊張時間、弛緩時間ともに平均値が1.25秒以内、かつ10回中8回が1.5秒以内で近似した値を示す。
2)1型
緊張時間、弛緩時間ともに延長する。調節衰弱のことが多い。偽近視、調節性眼精疲労のこともある。
3)2型
主として緊張時間が延長する。調節衰弱、偽近視、遠視、初老期の眼精疲労が多い。なお、この緊張時間は必ずしも直線的な延長ではないため不定型との混同がある。
4)3型
主として弛緩時間の延長、調節痙攣、若年者の屈折性眼精疲労がこの型を示す。
5)4型
緊張時間のみ平均3秒近い延長を示す。老視あるいは若年者の遠視眼がある。後者では調節安静位が著しく近点側にずれている場合がある(positive accommodation)。
6)5型
緊張時間、弛緩時間ともに3秒以上延長する。老視あるいは瞳孔緊張症(Adie瞳孔)がこの型を示す。
7)6型
緊張時間、弛緩時間が5秒、2秒と変動が激しくパターンに漸増、漸減が認められない場合は、むち打ち症などの自律神経の異常を疑う。
8)7型
緊張時間、弛緩時間が次第に短縮する場合睡眠不足などの単純疲労が多い。
9)8型
緊張時間、弛緩時間とも漸増、漸減を繰り返しても時間延長がほとんどない場合は軽度の疲労であり、あまり問題ない。
10)9型
両眼調節時間が片眼調節時間よりも延長する場合は両眼視機能異常、筋性眼精疲労を考える。

 ただこの検査も自覚的な検査であり、被検眼の矯正視力、被検者の努力、注意、集中力が影響し、ピントがボケ始めた時点を正確に応答するむずかしさも残されている。また、調節lagも混入することは石原式と同様である。本来は調節幅を求める検査ではなく、調節時間の型からどのような調節障害かを診断することを目的とした器械であるが、検査結果の再現性が得にくいこと、正常者あるいは異常者であっても、いくつかの型に当てはまってしまうために、この検査結果(アコモドグラムパターン)だけで診断することは無理があると考えられる。


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