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当院院長・近江源次郎が株式会社文光堂刊「眼科薬物治療ガイド」の「眼精疲労」の項目を執筆しておりますので、その内容を転載しお届けいたします。 以下、株式会社文光堂刊「眼科薬物治療ガイド」より(2004年9月29日第1版第1刷発行)
眼精疲労は外環境要因(眼の使用)、視器要因(眼の能力)、内環境・心的要因(耐える力)と疲労回復要因のバランスの崩れにより発症すると説明されるが、治療はそのバランスを調整することである。治療の原則は、原因疾患の治療であり、それと平行して症状寛解への対症療法を行う。原因に対する治療や配慮を怠り、点眼薬や内服薬の処方に終始するなら、眼精疲労の訴えは消失しない場合が多い。ここでは、従来よりの原因別分類(表1)に基づき、それぞれに対する薬物療法を中心に述べる。 (表1)
約20年前までは老視が始まる40歳前後からみられるとされていたが、最近のVDT従事者の増加とともに若年者にも急増してきている。治療としては、不適眼鏡(あるいは裸眼)が問題と考える場合には適切な眼鏡処方(特に乱視矯正が重要)が必要となるが、最終的には作業専用眼鏡の装用が望ましい。しかし、まずシアノコバラミンcyanocobalamin(サンコバ ◆処方例
本来存在する眼位のずれのため、外眼筋の主として輻湊機能と両眼視の融像機能を酷使するために疲労するものである。したがって根治のためには、眼位のずれを補正するプリズム眼鏡(特に上下ずれに対して有効)や斜視手術あるいは両眼視の視能訓練が必要となる。この眼精疲労でも両眼視機能が減弱するため、随伴して調節機能低下も発生するので、一般臨床では調節性眼精疲労と同じ薬剤(シアノコバラミン点眼液など)を使用する場合が多い。しかし眼局所へのビタミンB12製剤の点眼は無効であるとの報告もあり、むしろ眼筋への賦活を目的としたアデノシン三リン酸二ナトリウムadenosine
triphosphate disodium(アデホス ◆処方例
何らかの器質的眼疾患に基づくもので、原疾患の治療を優先すべきである。いたずらにシアノコバラミンの点眼やメコバラミンの内服などを長期にわたり漫然と使用すべきではない。特に緑内障の初期に眼精疲労を訴えることがあるので、眼精疲労患者では眼圧測定や視神経乳頭所見は重要である。また近年、ドライアイが原因と考えられる眼精疲労患者も多く、その治療薬として角結膜の保護薬・人工涙液などが必要となるが、※詳しくは乾性角結膜炎(ドライアイ)の項(82頁)を参照されたい。
両眼の屈折状態の差が大きいため、眼鏡矯正では左右の網膜像の大きさが異なって疲れるため、原則としてコンタクトレンズによる矯正を行う。左右の差が軽度のものやコンタクトレンズが装用できないものに関しては、片眼低矯正の眼鏡処方やメコバラミン、アデノシン三リン酸二ナトリウムなどの内服投与を行う場合もある。 ◆処方例
軽症の神経性眼精疲労患者に対する治療は調節性のものと基本的には同じである。まずシアノコバラミンなどの点眼を行い、ついでメコバラミンなどの内服を追加する。ただ調節性のものに比べ難治なものが多く、これだけでは改善しないものも多い。自律神経の失調が疑われるものには、トフィソパムtofisopam(グランダキシン ◆処方例
最近の急速なOA機器の普及による社会の高速化や情報化に伴い、眼精疲労患者は量・質ともに大幅に変化しつつある。眼精疲労は自覚症状が先行することが多く、薬物療法の効果判定や中止時期の決定が困難な場合がある。調節機能などの他覚的な異常が把握されていれば、その改善を目標として治療を継続あるいは中止する。自覚症状が目安の場合には、投薬が長期にならないように注意が必要である。いずれにしても、薬物療法のみに頼らず訴えをよく聞き、症状の成因や薬物療法の効果などをよく説明し、患者を励ますなど精神療法も併せて行うことが大切である。眼精疲労に対しては、まず原因療法が優先されるべきであり、屈折異常や調節異常に対しての適切な眼鏡処方、眼位異常に対するプリズムあるいは手術療法、ドライアイによるものでは角膜・結膜保護を目的とした療法、環境要因によるものでは環境の改善や対処法の工夫などを行いつつ、薬物療法を追加することが望ましい。治療薬の選択にあたっては、それぞれの特性を十分に考慮したうえで、眼精疲労の病態に応じた薬剤を選択することが重要である。
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